街騒がす17年周期の来客

 
  アメリカ北東部で蝉(せみ)が大発生してい る。毎日、日の出とともに大合唱が始まる。「ザワ、ザワ、ザワ」「ジャー ジャージャー」 森、林、公 園、学校、教会、駅、家の庭先、木がある所ならどこでも。不思議にも17年ごとに起こるので、ちょっとしたミステリー現象なのだ。その数は億、兆とも報道 されている。「ブラッド10型」と呼ばれるこの蝉は、赤い目をした「ツクツようだ。

 日本では蝉の出現は普通のことで、夏の風物詩でもある。しかし、アメリカでは17年蝉の大群を 「気持ち悪い」「身の毛のよだつ騒音」「不気味な昆虫」と 思っている人が多い。が、中には楽しみに待っていたという人もいる。私もその一人である。


17年蝉のカップル







木の葉にびっしり蝉の抜け殻

 5月の半ば、友人から知らせがあっ たので、すぐ行ってみた。「うわっ、本当、すごい!」。彼女の家はアメリカの典型的な住宅で、芝生の庭と大きな木が たく さんある。その木の幹に、枝に、葉っぱにびっしりと蝉の抜け殻がついている。木の周辺の地面には直径1センチぐらいの穴が黒いビー玉を散らしたようにあい ている。芝生の中にもびっしりだ。

 それから1週間、わが家の周辺も急に蝉の大合唱が始まった。ビルの狭間(はざま)にある街路樹からも聞こえ る。車でハイウエーに入ると、その周囲からも「ジャージャー」と波のように聞こえてくる。フロントガラスにパチッ、パチッと何かがぶつかった。蝉だ。よく 見ると、道路上にいっぱい飛んでいる。
 小学校からは「蝉を持ちこまないでくれ」と通知があり、「犬が食べて困る」とか、あるレストランでは「蝉料理」も登場した。蝉をかたどったチョコレート も売っている。

  なぜ17年なのか、その理由はまだ分かっていないようだ。つまりは、仲間が一度に発生して子孫を残すため。一説によると、17年蝉の他に13年蝉というの があり、13とか17という数字、つまり素数が キーになる。一定期間ごとに大量発生するタイプの蝉は極力、他の蝉とダブルブッキングしないことが繁栄のための条件なのだ。

地中から這い出てきた穴

13年蝉と17年蝉がはちあう 確率は221年に一度。もちろん素数は他にもたくさんあるが、例えば101年蝉などは地上に出る前に寿命がつきてしまうだろう。もう一 つの説は、昔この地方に蝉を食べるインディアンが住ん でいた。ところがある年、戦争や病気で 絶滅してしまった。それが今年の18回期前、1698年のこと。17年前の1987年はレーガン大統領、中曽根首相。携帯電話もインターネットも一般化し ていなかった。次回の大発生は2021年。アメリカは、日本は、山梨はどうなっているのだろう。

(2004年6月9日掲載)

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