歩む道見つからず足踏みも
 

 その日は、朝から雨が降っていた。雨の日は、 我が高校の校門前の道路は生徒を送ってくる親の車で大混雑。保健室も、自転車で転倒した生徒の手当てなどでごったがえす。

 20分ほどしてようやく一息ついたころ、「先 生、お久しぶり」と、いきなり3人の若者が入ってきた。「あら、K君じゃないの。あか抜けちゃってカツコイイから だれだか分からなかった」。さっぱりした短髪に、赤いTシャツとジーパンがよく似合っている。「雨が降っちまって、仕事が上がったりだよ。きょうはもう休 みだ」と、明るく笑う。

 K 君は、2年生の1学期に中途退学した生徒だ。入学してから、ずっと学校になじむことが出来ず、休みがちだった。夜のアルバイトをしているからか、学校に来 ても勉強に身が入らない。「疲れた、眠い、具合が悪い」と、保健室に来て休んでいることが多かった。口数は少なく、表情も暗い。 本人は、就職して働きた かったのに、親が「高校くらいは卒業しておかないと」と口うるさく、仕方がなく進学したという。入学はしたものの、何とかして学校をやめたいのだが、親は 許してくれない。毎日、親とのいさかいが続いた。そのうちに出席日数が足りなくなり、成績も悪くて卒業が難しくなる。親もやっとあきらめて、退学というこ とになった。

 その後、K 君は真剣に仕事を探した。ところが、高校卒業者ですら就職が難しいこのご時世、高校中退者は、どこの職場からも敬遠される。やっと知り合いの建築外装専門 の工務店で雇ってもらうことが出来た。自分の実力を発揮できる場所を与えられた彼は、頑張って働き、先月は特別手当てをもらったと喜んだ。「このごろ、性 格が明るくなったんだ」と、自分で驚いている。

我が高校で は、K君のような中退者が多い。しかも、みんなが披のようにうまく行くとは限らず、自分の歩むべき道が見つからず に足踏みしている生徒の方が多い。学校が悪いのか、家庭が悪いのか。それとも社会が悪いのか。彼らは、やっぱり犠牲者だと思うのだが、どうだろうか。
2000年3月掲載)

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