父親とけんかきっかけに変化


 
夏 休みが終わり、2学期が始まった。保健室にいつものように生徒がやってくる。「部活にあけくれた」とサッカー部の宏史は日焼けしたさわやかな笑顔で話 す。反面、青白い顔をした典子は「何もしない、だらだら寝てた」と生気がない。「時差ぼけで眠いよ」と言う章二は、夜もふけてから友人と町に繰り出し、コ ンビニや公園などで朝まで過ごす日々だったとか。2年生の恵理は3年生のボーイフレンドの家にずっと泊まっていたという。「親も承知、あきらめてるみた い」とさりげなく言うので驚く。

  「先生、お久しぶり」。真っ黒に日焼けした友樹は夏休み中ずっと土木作業のアルバイトをして20万円稼いだとのこと。1学期には80キロあった体重が65 キロになり、肩の筋肉がたくましい。卒業したら父親の水道配管業の仕事を継ぎたいと言っている。友樹は高校に入る気はなかった。当然のように欠席がちで遅 刻も多い。昨年の2学期頃からよく保健室に来るようになった。地味で口数は少なく、何を訴えるわけでもないが「父親は嫌いだ。合わない」ともらしていた。

  高校に入ってからの友樹の様子を見て父親は毎日のように「学校に行け、それが出来ないなら働け」と手を上げたこともあった。3年生になったある日、学校を 休んで寝ている友樹に父親がけりを入れた。そこで友樹はキレた。「うるせ―」と言うやいなや父親に挑みかかり、取っ組み合いのけんかになった。体の大きい 友樹はあっという間に父親を押さえ込んでしまった。その時、父親の目を見て腕の力が抜けた。「泣いてるみたいだった。俺、ビビった」

  そんなことがあってから友樹は土日のアルバイトをするようになった。それもきつい土木作業だ。「メチャメチャ体を使う仕事をしたくなったんだ。そうした ら、やたらと調子が良くなった」と笑う。無気力、無関心、無感動と言われる現代の高校生だが、心の中は不安、迷い、葛藤の泥沼でもがいていることを分かっ てやりたい。

2000年8月掲載)
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