夏休み終え、来なくなる生徒 


 ある美容室で、卒業生の宏幸に憧れのストレートパーマをかけてもらった。「先生、髪形変えた?それ、いいよ」朝、保健室にやってきた生徒が言う。「スト パー かけただけ?どこでやった?」休み時間立ち寄った生徒が興味津々に触ってきたりする。その日は一日、こんな具合で仕事も途切れがちであった。

  宏幸は卒業して3年。今は一流美容師を目指して修行中という。先日、学校に来た時、保健室に寄って いった。茶髪のロンゲが良く似合うさわやかな青年だ。「先生、その髪、俺が何とかしてやるよ」「無理でしょう。高いお金出してこれなんだから」彼は自分の 店が誇っている特殊パーマ技術を熱弁し、「だまされたと思って来てみれば」と店のカードを置いていった。仕事熱心で情熱的な姿勢は、とても新鮮に見えた。 半分その気になっていたところへ、保健主事のA先生が「彼は保健室へよく来ていたんです。きょうは美容専門学校を受験するための証明書を取りに来たと言っ てました」と彼の高校時代の様子を聞かせてくれた。

  宏幸は工業高校へ何となく入った。将来の目標もないし、敷かれた道を進むにはあまりに夢がない。何のために勉強するんだ、何もかも面倒だと毎日思ってい た。それに、学校まで15キロもある道のりを、自転車で通った。雨が降ると気持ちが引く。長い休みの後などは足が遠のく。だんだん遅刻や欠席が増え、卒業 も難しくなってきた。担任の机が保健室にあり、保健室の先生はみんな彼を励ましてくれた。何も言わず受けいれてくれ、試験勉強も付き合ってくれたという。 彼は毎日保健室に通った。やっと卒業した彼は「保健室の先生たちのおかげだ」と話した。 A先生は言う。「特に僕らが何をしたというんではないんです。彼の話を聞いたり、気持ちを分かってやったということかな」

  今、宏幸と同じような気持ちで高校生活を送っている生徒が多い。夏休みを終えて学校に来なくなったり、退学届が出されたりする。2 学期を前に、今から心配になる。     

2000年8月掲載)
目次のページへ戻る